親名義の家を相続する?トラブルを防ぐための基礎知識
親名義の家を相続する場面は、多くの家庭に訪れる可能性があるものの、実際にその時が来ると「どんな手続きが必要なのか」「トラブルになったらどうしよう」といった不安を抱える方が少なくありません。特に、家族が住み続ける実家や、空き家となる家など、状況によって注意すべきポイントや手順も異なります。
この記事では、親名義の家を相続する際に知っておきたい基本的な流れや注意点、そしてよくあるトラブル例や解決のポイントまで、実際の体験談や事例も交えながら詳しく解説します。相続税や名義変更、相続登記の基礎知識から、家族の財産を守るために今からできる対策まで幅広くご紹介しますので、ご自身やご家族の安心につながるヒントとして、ぜひお役立てください。
親名義の家を相続するとは?基本の考え方
親名義の家を相続する場面と家族の事情
親名義の家を相続する場面は、親が亡くなったときに訪れます。遺された家を誰がどのように引き継ぐのか、同居・別居や兄弟姉妹の有無、家以外の資産の状況によっても最適な方法は異なります。特に「実家に誰かが住み続けたい」「兄弟全員で平等に分けたい」「将来的に売却も検討したい」など、家族ごとに希望や考えが異なるケースが多いです。
相続が発生した際、家だけでなく現金・預貯金や土地、株式、車、貴金属などのさまざまな財産が相続の対象となります。これらはすべて「相続財産」と呼ばれ、家の相続もその中のひとつに位置づけられます。実際には家の資産価値が大きいため、遺産全体に占める割合も高く、相続人同士で意見が分かれやすいポイントです。
「親が亡くなったら自動的に住み続けられる」と思いがちですが、法的には遺言書や遺産分割協議で相続人が決定され、家を取得できるかどうかが決まります。事前に親が遺言書を残していればスムーズですが、そうでない場合は相続人全員で話し合いが必要です。場合によっては第三者を交えて協議したり、調停に発展するケースもあります。
近年では、空き家問題や相続税対策の観点から、家の相続方法に工夫を凝らす家庭も増えています。家を「誰が」「どのように」相続し管理していくかは、相続後の生活に大きな影響を与えるため、早い段階から家族で話し合いを重ねておくことがトラブル回避のコツです。
親名義のまま住み続けるリスクと影響
親が亡くなったあとも名義変更をせずに住み続けてしまうと、法律上の所有者は亡くなった親のままのため、将来的に売却・賃貸・リフォームなどの重要な手続きができなくなります。さらに、相続登記の義務化により、2024年4月以降は相続登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性も。名義変更を怠ったまま年月が経つと、相続人の数が増え、権利関係が複雑になってしまい、後々大きなトラブルにつながることもあります。
相続の基本用語と登場人物
相続では「被相続人(親)」と「相続人(子や配偶者、兄弟など)」が登場します。遺言書があればその内容が最優先され、なければ法定相続人全員で遺産分割協議を行います。法定相続人の範囲や順番は民法で定められており、戸籍で確認することができます。家族構成や関係性によって誰がどの財産を相続できるかが決まるため、事前確認が重要です。
家以外の相続財産との関係
相続税や遺産分割は「家だけ」で決まるわけではありません。預貯金や土地、有価証券、車など、すべての相続財産を合算し、基礎控除額を超えた部分に税金がかかります。家の評価額が大きい場合、他の財産で分けきれずトラブルになることも少なくありません。現金と違い分割しにくい家の取り扱いは、相続の最重要ポイントとも言えます。
親名義の家を相続する場合の手続きの流れ
遺言書や遺産分割協議の有無を確認
相続手続きはまず「遺言書の有無」を確認することから始まります。遺言書が見つかれば、原則としてその内容が優先されます。遺言書がなければ法定相続人全員で「遺産分割協議」を行い、家を誰が取得するか・どう分けるか話し合いを進めます。協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停に発展することも。実際に「親が遺言書を残してくれていたおかげで、兄弟間の争いがなくスムーズに手続きができた」という事例もあれば、「遺産分割協議で意見がまとまらず、弁護士を交えて数か月かかった」という体験談も見られます。
名義変更(相続登記)の進め方
家の相続が決まったら「相続登記(名義変更)」の手続きが必要です。相続登記は、被相続人(親)から相続人(子や配偶者)への不動産の名義を正式に変更する手続きで、2024年4月からは義務化されています。手続きは法務局で行い、不動産所在地ごとに申請します。自分で行う場合も可能ですが、不備やトラブル防止のために司法書士へ依頼する人も多いです。実務上、登記を怠ったまま数年経過し「売却時に名義が親のままで困った」という事例や、相続人が増えて権利関係が複雑化し、解決に膨大な手間がかかったというケースもあります。
相続登記の義務化と注意点
2024年4月から、不動産を相続した場合は「3年以内に登記申請」を行うことが義務化され、怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。さらに、名義が親のままだと売却・担保設定・リフォームなどもできません。兄弟姉妹など複数人で相続する場合は共有名義になりますが、将来的なトラブルを防ぐためにも単独名義化や持分の整理を検討することが重要です。
手続きに必要な書類と費用の目安
相続登記に必要な主な書類は「被相続人の戸籍謄本一式(出生から死亡まで)」「相続人全員の戸籍謄本」「遺産分割協議書」「固定資産評価証明書」「住民票」「遺言書(ある場合)」などです。必要書類が揃わない場合、役所や法務局で追加手続きが必要となり、時間がかかる場合があります。費用面では、登録免許税(固定資産評価額の0.4%)のほか、戸籍取得手数料、司法書士に依頼した場合の報酬(5~10万円程度が相場)がかかります。
実務上、「平日に役所や法務局へ何度も足を運んだ」「必要書類の不備で再提出を求められた」など、予想外の手間がかかることも少なくありません。事前に必要書類リストを確認し、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。
親名義の家にかかる相続税の基本知識
相続税がかかるケースとかからないケース
親名義の家を相続した場合、必ず相続税が発生するわけではありません。相続税が課税されるかどうかは、家を含めた全相続財産の合計額が「基礎控除額」を超えるかどうかで決まります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されます。たとえば相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。この金額を超えない範囲であれば、相続税はかかりません。現実には「家と少額の預貯金だけ」の場合、税金が発生しないケースも多いですが、都市部の不動産や複数の財産がある場合は課税対象になることもあるため、事前に全財産をしっかり把握しておくことが重要です。
不動産評価額の算出方法
家や土地など不動産の相続税額を計算する際は「相続税評価額」を使います。家屋の場合は「固定資産税評価額×1.0」、土地は「路線価方式」または「倍率方式」で算出します。
路線価方式の場合は、国税庁が公表している路線価(1㎡あたりの単価)×土地の面積×補正率で評価します。路線価が設定されていない土地は、市町村が定める固定資産税評価額×一定の倍率で計算します。不動産評価額の算出は専門知識が必要なことも多いため、不安な場合は税理士や不動産会社に相談すると正確な金額が分かります。
基礎控除と課税遺産総額の計算
全相続財産から基礎控除額を引いた金額が「課税遺産総額」となり、この金額に対して相続税が課されます。
例:家と土地の評価額3,000万円、預貯金等5,000万円、相続人2人の場合
総財産:8,000万円 - 基礎控除:4,200万円=課税遺産総額3,800万円となります。
この課税遺産総額を法定相続人で分割し、それぞれの持ち分ごとに税率をかけ、控除額を引いて税額を算出します。
相続税の計算例とシミュレーション
たとえば、課税遺産総額が3,800万円、相続人2人の場合、1人あたりの法定相続分は1,900万円です。速算表で1,900万円は税率15%、控除額50万円なので、
1,900万円×15%-50万円=235万円が1人あたりの相続税額となります。
なお、現実の相続では不動産の評価や相続人ごとの実際の取得割合、特例や控除の活用で税額が変動しますので、あくまでシミュレーション例としてご参考ください。
相続でトラブルになりやすいポイント
家の分割が難しい理由
不動産は現金のように分割できないため、誰が相続するか・どう評価するかでトラブルになりやすい資産です。「兄弟で平等に分けたいが家は1つしかない」「家を引き継ぐ人に他の相続人が不公平感を抱いた」など、金銭で調整する場合や売却して現金化する選択を巡って揉めることも珍しくありません。
共有名義の落とし穴
兄弟姉妹で共有名義にすると「売却や賃貸、リフォームのたびに全員の同意が必要」「1人でも亡くなるとその相続人が権利を持つ」など、長期的には権利関係が複雑化しやすく、トラブルのもとになります。将来的な分割や売却を見越して、可能な限り単独名義や持分整理を検討することが大切です。
同居・別居による相続人間の対立
「同居していた家族が引き続き住みたい」「遠方の兄弟が現金での分配を希望する」など、生活事情の違いから意見が対立しやすくなります。たとえば「親と同居していた長男が家を相続、次男と三男には現金で調整したが、評価額や分配金を巡り口論になった」といった事例もあります。お互いの事情や希望を尊重しつつ、冷静に協議することが重要です。
相続放棄や単独相続の注意点
家を引き継ぐつもりがない場合、相続放棄も選択肢ですが、家だけ放棄して他の財産のみ相続することはできません。また、単独で家を相続した場合も、相続税や管理費用、将来の売却・維持に関わる負担をすべて引き受けることになるため、安易に決断せず家族と十分話し合うことが大切です。
親名義の家を相続した後の名義・管理
名義変更を怠った場合のリスク
親名義の家を相続した場合、名義変更(相続登記)をしないまま住み続けると、法律上の所有者は亡くなった親のままです。この状態が長期間続くと、売却や賃貸、リフォームの契約など重要な取引ができず、権利関係が複雑になりがちです。さらに、相続人が亡くなって次世代へと移るたびに、関係者が増えて手続きが困難になることもあります。2024年4月からは登記の義務化により、登記未了の場合は10万円以下の過料が科される可能性もあるため、早めの手続きを心がけることが重要です。
住み続ける場合と売却する場合の違い
親名義の家を相続した後、実際に住み続ける場合は、名義を自身に変更し、固定資産税の納付先やライフラインの契約変更など、日常的な管理を引き継ぎます。一方で、家を売却する場合は、名義変更後に不動産会社と媒介契約を結び、売却手続きを進めます。売却時は相続税の納付や譲渡所得税の計算、必要書類の整備など注意点が多く、タイミングによっては「3000万円特別控除」などの特例も活用できます。住み続けるか売却するかは、家族の将来設計や経済的な状況を考慮し慎重に判断しましょう。
空き家となった場合の管理・活用方法
親名義の家が相続後に空き家となるケースも多く見られます。空き家は老朽化や防犯上のリスク、固定資産税の負担など、放置することでさまざまな問題が発生します。近年は空き家対策として自治体が相談窓口を設置し、売却や賃貸、リフォーム、解体の補助金などの支援策も増えています。また、短期賃貸やシェアハウス運用、地域活性化プロジェクトへの参加など、多様な活用法も考えられるため、地域の状況や家族の希望を踏まえて適切に管理しましょう。
トラブルを防ぐポイント
相続や家の管理でトラブルを防ぐには、早めに名義変更を行うこと、家族間で情報や希望をオープンに共有することが大切です。また、不動産会社や専門家への相談を活用し、法律・税金・不動産取引など各分野で正確な情報を得ることもポイントです。近年は登記義務化や税制の改正もあり、定期的な見直しや情報収集も怠らず、万全な準備で家族の資産を守りましょう。
相続税・登記費用を抑える節税対策
小規模宅地等の特例とは
「小規模宅地等の特例」は、相続した自宅の土地が一定の条件を満たす場合、最大80%まで評価額を減額できる制度です。故人の配偶者や同居していた家族が引き継ぐ場合や、別居でも持ち家がない等の要件を満たせば適用できます。たとえば評価額4000万円の土地が800万円まで減額されるため、相続税の大幅な節税につながります。ただし、330㎡までなど面積の上限や、遺産分割協議の成立が必要といった要件があるため注意しましょう。
生前贈与の活用と注意点
生前贈与を活用すると、相続財産全体を減らして将来の相続税を抑えることができます。毎年110万円まで非課税となる「暦年贈与」や、2500万円まで一括で非課税となる「相続時精算課税制度」などがあります。ただし、贈与した財産は相続時に加算されるケースもあるため、制度の内容や適用条件を事前によく確認し、無理のない計画を立てることが大切です。
配偶者控除・生命保険非課税枠の使い方
配偶者が相続する場合は「配偶者控除」を活用すると、最大1億6000万円または法定相続分までの財産は相続税がかかりません。また、生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。これらの制度を上手に活用することで、現金を残しやすくなり納税資金対策にも有効です。
賃貸活用や財産整理の工夫
親名義の家を賃貸に出すことで評価額を下げたり、売却や現金化を早めに検討することで相続財産を整理しやすくなります。家族構成や今後のライフプランに応じて最適な方法を選び、専門家のアドバイスも参考にしながら納税資金や管理の負担を軽減しましょう。
体験談・よくある事例から学ぶポイント
親名義の家を兄弟で相続したケース
兄弟3人で実家を相続したAさん一家は、当初全員で共有名義にしました。しかし、数年後に一人が売却を希望し、他の兄弟と意見が対立。結局、共有者全員の同意が必要なため売却できず、調停を経てようやく解決しました。「早めに単独名義や現金分割を考えておけばよかった」と振り返っています。
名義変更をせずに住み続けた事例
Bさんの家族は、親が亡くなった後も名義変更をせずそのまま住み続けていました。しかし、数年後に売却を検討した際、登記が親のままのため手続きが進まず、全相続人の協力を得て急いで登記を行うことになりました。「普段からきちんと手続きをしておけばよかった」と実感したそうです。
相続税が払えず実家を売却した体験
都市部の実家を相続したCさんは、不動産評価額が高く、相続税の支払いが困難でした。納税資金を確保するためやむなく実家を売却し、兄弟で分け合いました。「早めに納税資金の準備や節税対策を検討すべきだった」と感じたそうです。
遺言書や分割協議で円満に相続できた例
Dさんの家庭では、親が生前に遺言書を作成してくれていたため、兄弟全員が納得して円満に相続が進みました。「遺言書の準備は家族の思いやり。トラブルなく手続きができて本当に助かった」と話しています。
まとめ
親名義の家を相続する際は、相続人同士の話し合い、正確な財産把握、登記や税金の手続きなど、多くのポイントを慎重に進める必要があります。家の分割や名義変更、節税対策や管理方法まで、知識を深めておくことで将来のトラブルや損失を防ぐことができます。大切な家族の財産を守るためにも、早めの準備と専門家への相談を活用し、安心して相続に向き合いましょう。
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